2009年05月30日

ソウルメイト・清志郎 (下巻)

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暗い、さみしいと、母のない子のように打ち震えていた。

男と言わず女と言わず涙を浮かべてた。みなそれぞれの思いで。

けれどもそれはとてもいいイベントだった。

大勢のひとが訪れた。
新曲が披露された。
ヘリまで取材に来た。

こんなすばらしいショーに、清志郎本人がいないなんて、
そんなのさみしすぎる、との思いもあった。
いつもなら「待ち時間、長かったよ…」とか言いながら出てくるのにと。

それでもわたしは悲しみと同時に、幸せをかみしめていた。



それはまさに、
忌野清志郎という長い長い映画を見ているような実感だった。
そしてその映画の中になぜか自分も居て…
本当に悲しい気持ちになって、泣いている。

その日は365日のうち最高の撮影日よりで…
空高くゆるやかに風が吹いていて、
木漏れ日と、花々と、
ステージのほこりの中でライトやろうそくの灯がきれいに映っている。
みんな静かな顔でゆっくり歩いている。
まるで音さえも無いかのような世界。
しかしそれはけっして幻想的な映像ではなく、
スクリーンに具体的に焼き付いている鮮明な風景である。

そんな昼間の夢のような映像が脳裏にずっと残ったまま、
夕方からファン仲間たちでお好み焼き屋に流れて飲んでいた。

そこで出会ったひとたちと笑いつつ、
隣に座るサトちゃんと清志郎さんの話しをした。
清志郎と出会ってから、自然に「なんでもできる!」と思えて
いろんなことを楽しめるようになったこととか。

そうだ、出会ってなかったら、今のわたしは確実に、ナイ。
もっともっとふてくされて、いじけたまま生きていただろう。
偏狭で、つまらないものしかほとんど知らず、
すてきな音楽や小説や絵本…それらを介して宇宙を旅するような
感覚なんて、知らずに過ごしていたかもしれない。

出会い方をまちがってたら、嫌いになってたかもしれない。
それほどまでに、彼は強かった。
清志郎を好きになった自分の感性に感謝したい。
でも清志郎さんには、感謝という言葉はなんだかちがうようにも思う。
言うなら、生まれてくれてありがとうだ。本当にありがとう。

サトちゃんが、携帯電話の清志郎の写真を眺め、
「なんでこんなにカッコいいねやろ…」とため息をついた。
ほんとに、この肩幅や指の形も。腰の線も、
自転車をこいでるときのあの足の形も、
だれよりもだれよりもだれよりもきれい。
コップを持つ手だって、だれもあんなふうにはできない!
それがいまあんな小さな、箱の… 
あぁなんといぅもったいない。

そういえば、座長と三上寛が話していた、
その人の身体はその人自身が選んでいるのだと。
例えば太ってるとか、やせてるとかはその人自身の魂がそれを選んでいる…
魂と身体はつながっているというか同等にあるというそんな話し。

身体の細胞は記憶を受け継いでは再生し、
はては宇宙とつながっている。
身体は死という形をとったとき、身体にそのひとの時間が凝縮され、
遠く未来を見ていたりもする。
いかに死ぬかは、いかに生きるかである
…という、そんな話しもあった。

竹中直人が涙、涙の弔辞の中で
「とてもきれいな顔でした、きれな手でした」って言ったのは、
そういうことを言いたかったのかなあ。

「どこから来たんやろう… そしてどこへ行ったんやろう」。
サトちゃんは写真を眺めたままつぶやいた。

ほんとになんであんなひとがいるんだろう。
愛の、かたまりのようなひと…
もう、もはや、宇宙から落っこちてきたとしか思えない。
だれも彼の代わりにはなれない。

わたしはあの歌声を、マイクを通してでなく直に聴いたことがある。
直にといっても本当は風や空気を介して。
アメ村の三角公園で…、
びっくりした様子の若い子たちの人だかりができていて、
さわれるくらいの間近で聴いた。
ギターは、小さなアンプにつないで肩にしょったりしてたけど…
声は… あんなに人が居て、野外なのに、
よく通って、上の高い木まで立ちのぼっていっていた。

 この運命に 甘いキスを送ろう

…って。
だからわたしはみんなに言いたい、あの宝の声は確実に存在してたって。

連休中の春一番コンサートでは、
いろんなひとが弔って清志郎の曲を歌っていて、
金子マリさんも、リクオも、すごくかっこよかった。
ソウルが、生き生きとしてた。

いなくなったと、思えない。

帰り道の夜、道ばたの土に植わった赤いカーネーションが
不意に目に入った。
あ、会えた、と思った。
上には丸いお月さまが、ひっそりと、明るく、さりげなく、
わたしの行く道を、まっすぐに照らしていた。




posted by アマイネ・フォーカス at 18:10| きょうの音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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